こんにちはNAGIです。
今回は、第73回診療放射線技師国家試験午前のMRIの解説をしてきたいと思います。
今回も午前と午後に分けて解説したいと思います。
解説
午前10 MRI の画質について正しいのはどれか。
1.信号収集時間は画質とは無関係である。
2.SN 比はボクセル容積とは無関係である。
3.静磁場強度が高いほど SN 比は高くなる。
4.静磁場の均一性は画質とは無関係である。
5.ハーフフーリエ法を用いると SN 比は高くなる。
- MRIの画質は信号収集時間が長いほどSN比は高くなります。情報をたくさん得られるのでもちろん画質も良くなります。
- ボクセル容積もSN比に関係します。ボクセルサイズは立体のサイコロ状、ピクセルサイズは平面の面積です。ボクセル容積を大きくすると、ボクセル内のプロトン数が増加するので単純に信号値が増えます。なのでSN比は増加します。 SNR∝ ボクセルサイズ × √加算回数 × √位相エンコードmatrix × √1/BW
- 正しい。静磁場強度が高いほどSN比はもちろん高くなります。1.5Tより3Tの方がもちろんSN比は高くなり、画質は良くなります。
- 静磁場の均一性も画質に関係します。磁場が不均一なら正しい信号が取れないので、画質は悪くなります。
- ハーフフーリエ法は全体のk空間の約60%充填して画像化する方法です。なので、通常より収集時間が短いです。選択肢1番で収集時間が長いほうがSN比は高くなるので、ハーフフーリエ法を使うとSN比は低くなります。
午前11 超伝導磁石と冷却に用いられるヘリウムについて誤っているのはどれか。
1.液体のヘリウムは不燃性である。
2.気体のヘリウムは空気より軽い。
3.気体のヘリウムは無色透明である。
4.超伝導状態にある電磁石の電気抵抗は0である。
5.気体のヘリウムは微量でも吸引すると危険である
- 正しい。液体のヘリウムは不燃性です。
- 正しい。気体ヘリウムは風船などに入れて利用したりしていますね。もし仮にクエンチが起きたら部屋からはしゃがんで退室しましょう。
- 正しい。気体で無色でない方が珍しいと思います。
- 正しい。電気抵抗が0になる状態のことを超伝導状態と言います。
- 誤り。気体ヘリウムは微量なら危険ではない。としか言えないですね(笑)
実際変声用のヘリウムはヘリウム100%ではないです。風船などに使われるヘリウムはほぼ100%なので、大量に吸い込むと酸欠状態になり危険です。実際どのくらいで危険なのか微妙なところですが、、、
午前14 1.5 T の MRI 装置と比較して、3T の装置でみられるのはどれか。ただし、静磁場強度以外の条件は同一とする。
1.T1 値の延長
2.T2 値の短縮
3.SAR の減少
4.磁気回転比の増大
5.化学シフト(ppm)の増大
1.5TのMRI装置と比較した3Tの特徴をいくつか挙げます。
・T1値の延長
・SARの増加
・SN比の向上
などです。
他にもありますが今回はこれだけあれば十分です。
- 正しい。一般的に静磁場が大きくなればT1値は延長します。
- T2値についてですが、緩和時間の長いものと短いもので違いがあるそうなので一概には短縮すると言い切るのは難しそうです。
- SARは静磁場が大きくなると増加します。SARについては公式があるのでそれを見てもらうとわかると思います。
均一な球体組織の平均SARの公式
SAR∝σr2B02α2D
∝:比例という意味
σ:電気伝導率
r:半径
B0:静磁場強度
α:フリップ角
D:デューティーサイクル
デューティーサイクルはスライス厚やTRにも関係します。SARの問題はSARの単位(W/kg)。TRが短くなるとRFパルスの間隔が短くなるので、SARは大きくなる。
- 磁気回転比は定数なので変わることはありません。
- 化学シフトも不変なので変わることはありません。でも、少し勉強している人ならこの選択肢に引っかかるかもしれません。なぜならケミカルシフトアーチファクトは静磁場が大きくなると、大きくなるからです。水と脂肪は5ppmずれているのは不変です。
午前15 MRI 検査室内に白い煙のようなものが認められた。発生原因として考えられるのはどれか。
1.液体ヘリウムが気化した。
2.装置の静磁場強度が上昇した。
3.検査室内の酸素濃度が上昇した。
4.床にこぼれた造影剤が気化した。
5.検査台が RF パルスによって発熱した。
これはクエンチを知っていれば答えれる問題です。1番以外は普通起こりえないです。
クエンチの知識があれば問題ないです。
午前16 健常成人の上腹部 MR 像について正しいのはどれか。
1.T2 強調像で総胆管は描出されない。
2.拡散強調像で副腎は肝実質よりも高信号である。
3.拡散強調像で肝実質は脾実質よりも高信号である。
4.T1 強調像で腎臓の皮質は髄質よりも低信号である。
5.T2 強調像で副腎の皮質は髄質よりも高信号である。
この問題正直国試に出す問題ではないと思います。自分が国試を受けていて、この問題に直面したら絶望ですね(笑)
MRIのT1強調像やT2強調像などで高信号、低信号を聞かれる問題では、特徴を理解しておけばある程度は解けます。この類いの問題は聞き慣れないような言葉を使ったりして惑わしてきますが、いたってシンプルです。
しかし、今回は解剖生理が分かっていなければ解けない問題です。結構難易度は高いと思います。
1つ1つ情報を処理していきます。
まず、T1強調像で高信号になるのは、脂肪、血液などです。次にT2強調像で高信号になるのは主に水っぽいものですね。これは、覚えていると思います。正直、これを覚えているだけで解ける問題もあります。
次に腎臓、副腎の皮質髄質について説明します。必要なことだけ言うので、詳しく知りたい人はネットで調べてみてください。
腎皮質は血液をろ過します。腎髄質は主に血中の水分と塩分を調節します。
副腎皮質はコレステロールを原料に多種のステロイドホルモンが分泌されます。
副腎髄質はカテコールアミンであるアドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されます。
解答に必要なキーワードが出てきました。それでは選択肢を見ていきます。
- 誤り。T2強調像と総胆管でピンとくる人もいると思いますが、MRCPはheavyT2なので総胆管が描出されないということはないです。
- 正しい。これが正解ですが、ほかの選択肢を見ないと答えれないので他の選択肢を見ます。
- 誤り。この選択肢も臨床していないとわからないと思います。実際に画像を見れば一目瞭然ですが、脾実質は拡散強調像で高信号になることで有名です。
- 誤り。腎皮質は血液をろ過します。つまり、血液がたくさんあるのかな。それならT1強調像では腎髄質よりは高信号になる。
- 誤り。副腎皮質はコレステロールを原料に、、ということは、副腎皮質は脂肪が多いのかな。じゃあT2強調像では高信号にはならない。
4、5は正直憶測な部分もありますが国試を解く上では今の感じでいいと思います。もしかした間違っているかもしれないです。。。
このような問題でも1つ1つ情報を処理していって解いたら大丈夫だと思います。
午前19 拡散強調像を撮影する際に b 値が増加するのはどれか。2つ選べ。
1.TR の短縮
2.フリップ角の増大
3.motion probing gradient 間隔 Δ の短縮
4.motion probing gradient 強度Gの増大
5.motion probing gradient 印加時間 δ の延長
b値とは、拡散強調像における拡散の度合いを示す値。b値の式を下に示す。
b(s/mm2)= γ2 G2 δ2(Δ – δ/3)
γ・・・磁気回転比
G・・・傾斜磁場強度
δ・・・MPG印加時間
Δ・・・MPG間隔
- 誤り。TRは関係ない。
- 誤り。フリップ角も関係ない。
- MPG間隔は延長するとb値は増加する。
- 正しい。
- 正しい。
午前74 静磁場の磁束密度が1.5 Tのとき、1H核は63.9 MHzで磁気共鳴を起こす。磁束密度が 3.0 T のときの共鳴周波数(MHz)はどれか。
1. 32.0
2. 63.9
3. 95.9
4.127.8
5.191.7
この問題は、解き方を2パターン紹介します。
まず1つ目は、一番簡単な解き方を紹介します。
問題文で1.5Tのとき63.9MHzで磁気共鳴を起こす。3TのときxMHzで磁気共鳴を起こす。xはいくつ?と捉えられます。つまり比例式で解けます。
1.5:3=63.9:x
x=63.9×2
=127.8(MHz)
この時63.9の計算が面倒なら64MHzとしても問題ないです。一番近い答えを選べばそれが正解です。
次に、2つ目の解き方を紹介します。こっちの方が放射線技師っぽいとき方です(笑)
ラーモアの式を使います。
ラーモアの方程式
ω0=γB0
ω0:ラーモア周波数(Hz)
γ:磁気回転比(MHz・T-1)
B0:磁場の強さ(T)
磁気回転比は42.6MHzと覚えておけばそのまま使えます。磁気回転比は覚えておいてもいいと思います。
覚えていないひとでも今回は、1.5Tのとき63.9MHzという情報を与えてくれているので導き出せます。方法は1つ目の答えの出し方で求めれます。完全な無駄足ですけど(笑)
42.6MHzを覚えていれば式に代入するだけなので、簡単です。
ω0=42.6×3=127.8MHz
まとめ
今回は第73回診療放射線技師国家試験の午前MRIの解説をしました。不明な点などあれば気軽にコメントしてください。今回はこの辺で終わりたいと思います。それでは!!
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